青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

生産財の青草新吾1はリタイア。シニアの青草新吾2は複業で貢献を目指す。

83-2/3 生産財マーケティングで調査レポート

生産財マーケティングの方法論に関し、マーケティングの参考で使った一昔前の調査レポートと今現在を比較することで多大なる気付きを得ることができます。

政府の官僚機構の机上作文は外れることが多いのですが、民間の調査機関が現場を歩き回って対面式聞き取りを行ったフィールド調査には多くの現場の知恵が混じることで10年経っても有効性が高いレポートが案外と多くあります。
FPDに関し筆者/青草新吾が今現在でも重宝にしているのが工業調査会が1995年に発刊した旧・日本債権信用銀行(現あおぞら銀行)・産業調査部のレポート「液晶部品・材料 ビジネス最前線」*1です。当時としては最先端の一級レポートです。技術トレンドと主要部材の大枠は今でもそのまま使えます。但し細部について、特にプレーヤーは大きく入れ替わっていますから、その後の状況変化を確認できます。
液晶テレビは、現在2007年時点ではパネル生産国が韓・台・日で、テレビ生産では中国が世界シェアの半分です。プラズマテレビは、モジュール生産国が日・韓に限られますが、90で前述の通り中国が2008年から生産国に仲間入りします。
上述日債銀(現あおぞら銀行)のレポートはPDPモジュールに関し「PDP富士通三菱電機、松下電子工業(中村社長の構造改革で今は松下電器半導体社)、といった先行メーカーに加え、ソニー日本電気等も参入を表明しており市場拡大が見込まれている。・・中略・・特に富士通が先行しており・・PDP市場を牽引するものとみられる。」と説明されていました。今現在では松下電器(松下プラズマディスプレイ(MPDP)/AVCネットワークス社)が世界トップで、富士通は日立と合流し89で前述の富士通日立プラズマディスプレイ(FHD)へと、NECは鹿児島県出水市のプラズマディスプレイ工場をイオニアに売却し撤退・・とスパイラルに激変しています。
同じく上述日債銀レポートによると、当時液晶デバイスは6-7割がパソコン向けで、1994年の市場規模は8千6百億円直接材料費3千2百億円と推定されていました。液晶テレビが登場した今では、1995年当時よりも一桁大きな需要が実現され更に需要が拡大していきます。部材のプレーヤーも新旧交代も進んでいます。当時はニッチすぎたのかあるいはノーマークだったのか、登場ゼロだったのが協立化学産業(枠シール剤)や86で前述の日本ゼオン(位相差原反フィルム)です。繰り返しますが大きな枠組みは今でもその通りですが、中身のプレーヤーはかなりの入れ替わりがあります。ここに生産財マーケティングにおける優良な調査レポートの活用要領が示されているような気がします。

*1:「液晶部品・材料 ビジネス最前線」1995年9月 isbn:4769311419