青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

生産財の青草新吾1はリタイア。シニアの青草新吾2は複業で貢献を目指す。

95-1/3 電子材料の産業規模

電子材料の産業規模に関し、日本メーカーの上位30社だけで売上高合計が7兆179億円ということですから、政府機械統計で8.3兆円の自動車部品工業に匹敵する規模であることが判ります。

電子材料のマクロ統計に関し、半導体産業新聞2007年7月4日付が業種横断集計した画期的な統計を発表してくれました。デジタル素材という業種横断コンセプトで編集された半導体産業新聞/泉谷渉氏の取材*1を17で前述しましたが、同じ脈絡の統計です。産業統計大分類製造業は、内訳で中分類の化学・非鉄・窯業・ガスなどの業種で構成されること、43[産業別付加価値額]で前述通りですが、今回の半導体産業新聞社の集計は、業種横断的であることが画期的です。
同紙発表では、2006年度電子材料売上高のトップは化学業界信越化学で5,123億円、2位が88[薄型テレビ向け精密機能硝子]で前述した窯業旭硝子で4,766億円、3位が日立ハイテクノロジーズの3,587億円です。以下業種別のトップ企業は、化学のフィルム業界日東電工の3,086億円、化学のガス業界では太陽日酸の3,054億円、非鉄業界では三井金属の2,493億円・・・などです。
電子材料(デジタル素材)分野における日本企業強さは、既存の収益基盤を持つ伝統企業がニッチな隙間市場であるにもかかわらず業種横断的幅広い知見を統合しながら、しかも手弁当で参加する方々も含めて、辛抱強く長期に亘って未来のための努力を持続することにあります。
経営学者/高橋伸夫氏が著書*2で「欧米文化はそれほど未来重視しないから、未来とは現在価値に割り引いて考えるべきものだが、日本文化未来傾斜型でとても未来重視する」と比較文化の視点で述べておられましたが筆者の経験からも同感です。
また小笠原泰氏は2003年上梓の「日本的改革の探求」*3で、日米欧での生活体験に基づく知見として「日本欧米思考方法根本的違い」を発表されましたが、「日本の強みは内向きな役割の精緻化にある。」とし、またこのことから「全体最適を考えない弱点にもなる」として1997年の京都会議(地球温暖化防止会議)で手段である共同宣言採択に固執した日本政府の姿勢が「議長国ならば共同宣言を採択しない選択肢もある」と考える米国人からすれば明らかな本末転倒に映ったかもしれない・・・は、全く同感です。このような脈絡で考えると、短期利益志向米国や多くのアジア企業にとっては、未来傾斜型結晶ともいえる「継続的改善型電子材料」は、資金調達の目処が立ちにくく、参入しづらい分野といえるのかもしれません。

*1:電子材料王国ニッポンの逆襲」泉谷渉 ISBN:4492761608

*2:「できる社員はやり過ごす」高橋伸夫ISBN:4532191351

*3:「日本的改革の探求」小笠原泰著 ISBN:4532310393