青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

生産財の青草新吾1はリタイア。シニアの青草新吾2は複業で貢献を目指す。

マテリアル系生産財

電線の営業形態(業態)は顧客関連のプロセスと営業プロセスの属性によって、商社経由であるか否かに関わらず、直需相手の紐付きと市販の店売りに二分できるのは、他の生産財と同様です。

産業用電線とは、ビルや工場、住宅向けで、直需で紐付きの電設ルートと、店売りを行う電線問屋や電設問屋向けの市販ルートがあります。店売りの市販ルートでは与信判断が重視されています。 機器用電線は主に直需の紐付きで、大手電機メーカーとその系列会社…

銅の用途の6-7割を占める電線の国内出荷に関し、日本電線工業会は会員の製造企業約140社の2006年暦年銅電線総出荷量が前年比1.8%増の銅量871千トンで3年連続の前年比プラスになった、と発表しています。

2006年暦年の出荷は銅電線が871千トン、アルミ電線が27千トンです。銅電線871千トンの部門別内訳は、建設・電線販売業385千トン、電機208千トン、自動車88千トン、電力74千トン、通信18千トン、その他62千トン、輸出32千トン、以上合計で871千トンです。アル…

電線業界はこの10年間で激変しました。供給面では電線大手6社を中心に業界再編が起こりました。

巻線業界の合従連衡は59で前述の通りです。需要面でも電機分野向け機器用電線と自動車分野向けワイヤーハーネスに軸足が移り、インフラ分野の電力や通信向けのウエイトが低下しました。 日刊産業新聞2007年1月26日付は電線工業会の会長人事に関連して、これ…

アルミの2次製品である軽金属製品(アルミ圧延製品)の流通に関し、最近では中国での事業展開が活発化しているようです。

日本アルミニウム協会の発表によると、日本のアルミニウム圧延製品の06年度需要は2360千トンで、板類が57%の1340千トンで3割強がアルミ缶、1割強がアルミ箔、押出類が43%の1019千トンで6割がドア・サッシ向けです。 軽金属製品(アルミ圧延製品)の加工流通で…

日本伸銅協会の発表では、2006暦年の伸銅品生産量(速報値)からは、品種別では、リン青銅の伸び率が17.8%で最も高いことが判ります。携帯電話などの情報通信、薄型テレビなどのデジタルAV、車載電装デバイスなどの自動車、といった3分野の需要が高まり続けているからです。

日刊産業新聞2007年1月26日付によると、2006年暦年の伸銅品生産量は1.05百万トンで、過去10年では97年(1.19百万トン)、00年(1.16百万トン)、99年(1.06百万トン)に次いで4番目に高い実績です。対前年比は、品種別の需要で1位の銅条が251千トンで106.4%、2位の…

非鉄金属の2次製品の流通に関し、電線業界で言えば電線商社、伸銅品で言えば伸銅品商社、のように各々の生産財の業界には各々に固有の流通と商社が存在します。

日刊産業新聞2007年1月12付けで、伸銅品では日本伸銅品問屋組合連合会の曽束会長が「製品単価の値上がりは売掛金の増加につながるため2006年は取引先の与信不安と与信判断に気を配った1年でもあった。四都(東京・名古屋・京都・大阪)の組合ともに充実してい…

平成15年度の日本政府の製造業統計によると非鉄製造業は就業者数の2%(133千人)で製造付加価値額の2%(1兆5千5百億円)を生み出しています。

前述76の1次製品の地金(金属塊)を加工して製造される2次製品は電線、伸銅品、アルミ圧延製品と、地金を溶解して成型する鋳造・ダイカスト製品などです。非鉄金属業界の製造業が株価欄の非鉄金属欄に記載されていますが、住友金属鉱山や三井金属などの鉱山製…

非鉄金属業界を構成するサブ業界に関し、非鉄5金属(銅・鉛・亜鉛・ニッケル・アルミ)の1次製品(地金)の流通では地金問屋が活躍した時代もありました。

15で前述の通り、ベースメタルとは生産量が多い鉄・アルミ・銅・鉛・亜鉛の5金属です。鉄を除きニッケルを加えた非鉄5金属は、非鉄製錬メーカーが原料から金属元素を抽出する製錬と精錬を経て製造する1次製品の地金(金属塊) が流通しています。 日本の産業構…

鉄と非鉄5金属(銅・鉛・亜鉛・ニッケル・アルミ)を除くレアメタルはデジタル素材として需要拡大が続く反面で供給が逼迫していますが、鉱石や中間原料を扱う商社の役割が高まっています。

川上の原料(鉱石・中間原料)の生産財流通と商社の機能に関し、レアメタル原料は多様な専門性が必要な上に小規模取引の集積なので専門商社が活躍しています。大手の総合商社が活躍するコモディティのベースメタル原料の大規模取引とは対照的な世界のようです…

非鉄金属産業は、川上で鉱山会社が鉱石の採掘や精鉱などの中間原料を生産し、製造業がこれを素材製品に加工します。製造業は更に電線、伸銅、アルミ圧延、などのサブ業界を構成しています。

住友金属鉱山の福島社長は産経新聞2007年1月17日付で「市況高騰は、中国の急速な経済成長が背景にある。銅やニッケルなどは、中国が国内であまり採れないために世界各地から買い集めている。投機資金も流れ込んだ。非鉄は電線、自動車、電子機器などに使われ…

2006.1.6-4/5 日本はマテリアル系生産財の国際競争力が高い

製造業の国際競争力に関し、日本が突出しているのは、電子材料とか部材とも表現されることが多いマテリアル系生産財の領域です。 天然資源から元素を抽出したり合成したマテリアルを下地材料にして、更に様々なノウハウを組み込んで高機能化した従来でいえば…

車載電装デバイスの進化はマテリアル系生産財の部材の進化へと派生していきます。

半導体産業新聞2006年11月1日付けで東レに関し「同社の中期課題IT-2010によれば、情報通信や自動車向け先端材料を伸ばし、2010年度に売上の半分、営業利益の75%までに構成比を引き上げる。創業80年を経て最先端マテリアルカンパニーとして生まれ変わっていく…

大型パネルでプラズマと液晶のコスト比較に関し、前述の内池平樹氏は「製造プロセスからはPDP約70ステップが、TFT-LCD約140ステップよりも有利だが、半導体強国となった韓国・台湾の高品質化と低コスト化は侮れまい、但し部材は殆どが日本製」と、マテリアル系生産財の部材での日本企業の圧倒的強さをレポートしておられます。

薄型テレビ向けでPDPパネルを製造しているのは、独走態勢の松下電器とこれを追う韓国Samusung SDI(三星電管)と韓国LG、日本のFHPとパイオニアです。台湾のFORMOSA(台朔光電)とCPT(中華映管)は事業展開を中止しました。 薄型テレビ向けの液晶パネルでは、…

PHPパネルの生産シェアは、日本勢が生産シェアの半分弱を維持できています。トップ独走の松下電器以下、2位SamsungSDI(三星電管)、3位LG、4位FHP、5位パイオニアで、九州も生産集積地の一つになりつつあります。

PDPパネルの生産では日本勢の勢いがみられます。韓国と台湾が世界シェアを二分する液晶パネルとは様相が異なります。富士フィルムの熊本工場建設は前述の通りですが、PHPパネルの生産に関して、パイオニアが出水市の鹿児島工場で、富士通日立プラズマディス…

非鉄・電線の巻線業界では大手の業界再編が一段落し、ハイブリッド車や電装向けなどでスパイラルな展開が始まっています。

巻線業界の合従連衡では、住友電工と第一電工の巻き線事業が統合された住友電工ウィンテック、昭和電線電纜とフジクラの巻線事業が統合されたユニマック、日立電線の巻線事業を集約した日立マグネットワイヤ・・等々が登場しました。

住友電工、古河電工、日立電線、フジクラといった電線メーカー大手は、マテリアル生産財の電線製造から派生したマテリアル系生産財を主とした電子・電装向けの事業が収益の過半を稼ぎ出すところまで進化が進んでいます。

例えばこれら4社は電子基板のフレキシブル配線板(FPC)やテープ基板の売上高が伸びており、2006年3月期の売上実績で、住友電工が518億円、フジクラが896億円、日立電線が225億円を計上、古河電工もテープ基板で新商品を発表しています。

テープ基板の製造で使われるマテリアル系生産財のテープ積層板に関し、2層テープのみならず3層テープ(3層CCL)でも進化発展が続いています。

接着材を介して銅箔と基材を張り合わせる3層積層板(CCL)では、TABテープの三井金属や新藤電子工業に加えて信越化学や京セラケミカル、が展開しています。 信越化学はJPCA2006で3μの極薄銅箔を採用したオールポリイミド両面銅張積層板の開発品を出展していま…

薄型テレビ向けテープ基板に関し、生産能力の積極拡大が進められています。

TAB/COFテープで首位の三井金属は、2005年10月の「大牟田工場増設」の発表で「既存の下関工場とあわせ月産3億2千万個まで可能な態勢と致します。・・・中略・・・液晶テレビとPDPテレビ等の薄型テレビ向けの需要増加は中期的に年間2桁以上の成長率が見込まれ…

薄型テレビが普及期に入ったことで、テープ基板の絶縁基材として使われるポリイミドフィルムの供給能力の拡大が進められています。

薄型パネルの駆動回路で使われるテープ基板の絶縁基材として使われるポリイミドフィルムに関し、宇部興産の供給能力拡大が発表されています。半導体産業新聞2006年8月26日付で「宇部興産の供給能力が今年10月に完成する第9期増設で年間3千1百万平方メートル…

FPD製造装置や半導体製造装置からの派生需要は、マテリアル生産財や中間財の製造企業にとっても需要の一セグメントを形成しています。

前述のFPD製造装置と半導体製造装置を合計した日本製の販売高は2005年度で2兆4百億円と巨大です。別の機会に整理したいと考えていますが、マテリアル生産財でステンレスやアルミ厚板、合成石英、特殊炭素、中間財でスイッチ、モーターやポンプ、制御基板や制…

日本の電子材料メーカーは、日本・韓国・台湾という高密度の市場を抱える「地の利」を得ているともいえます。「台湾や韓国に加えて、両国に近い九州立地」の工場建設の動きも出てきました。

マテリアル系生産財の電子材料で、日本の製造企業は、日本企業に加えて韓国のサムスンやLGあるいは台湾のパネルメーカーへのバリューチェーンとサプライチェーンにも参画することで、世界シェアの6-7割を維持しています。

中間財の薄型パネルが普及していくことで、派生需要の連鎖が生み出すマテリアル系生産財の電子材料の需要も、2015年頃には少なくとも10兆円以上、多分で20兆円規模へと急成長していきます。

電子材料全体の産業規模は、今現在の8-10兆円から2010年頃に少なくとも2倍の20兆円であれば、2015年頃には多分で3倍の30兆円へと拡大します。産業の規模で30兆円というのは「今現在の半導体産業と同等の規模になる」ということです。 電子材料全体の需要規…

中間財の薄型パネルのグローバル需要は2015年頃には数十兆円規模が見込まれます。今現在の半導体産業並の需要規模であり、自動車産業に比肩する産業連関も期待できます。

薄型テレビの需要予測と電子材料への産業連関に関し、2006年7月26日に松下電器第1四半期の発表会席上の川上副社長の説明が判り易くて参考になります。 1.世界需要の見通し 松下では2006年度のテレビの世界需要を1億6千万台程度(うちプラズマは1千万台、液…

テープ積層板(CCL)に関し、2層CCLに限れば、世界トップはキャスト方式が主力の新日鐵化学ですが、大型LCD用に限るとめっき方式の住友金属鉱山が首位となります。

テープ積層板で首位の三井金属はラミネート方式、キャスト方式、めっき方式とフルラインアップで対抗しています。TAB主力の新藤電子、日立電線は、銅箔と基材の熱圧着・高温接合やめっき法で2層TABを市場投入しています。 2層CCLで検索すると、ヒットした記…

テープ積層板は、3層CCLが液晶駆動回路の需要を掘り起こし、2層CCLの登場で選択肢が増え、今現在では実装高密度化の追い風を受けた2層が成長ドライバーです。

2層CCLの製造方法は、以下の3方式があります。 溶かしたポリイミド樹脂を銅箔に塗布して2層構造をつくるキャスト方式、 ポリイミドフィルムにスパッタをした上にめっきで導電層を形成するスパッタ・めっき方式、 ポリイミドワニスを使うラミネート方式。

テープ積層板に関し、3層CCLはTAB実装、2層CCLはCOF実装へと使い分けられています。3層と2層を合計したテープ積層板(CCL)の総合1位が三井金属です。

三井金属のホームページ。TAB/COFテープで世界シェア5−6割。 次世代COF用テープ基板の開発。 http://www.mitsui-kinzoku.co.jp/jinji/shigoto/cof.html

テープ基板のマテリアル系生産財であるテープ積層板こそはマテリアル系と100年企業の組み合わせで抜群の国際競争力を生み出している象徴的な生産財といえます。

泉谷渉氏*1の表現する「100年企業」が、気長に辛抱強く在来型のマテリアル生産財をマテリアル系の技術で進化させてきたマテリアル系生産財で抜群の国際競争力を生み出している点で、日本の産業競争力を象徴する分野の一つといえます。中間財の液晶パネルの規…

フレキ基板(FPC)の屈曲強さを高める競争では、絶縁基材のフィルムでも開発競争が続いています。

半導体産業新聞8月2日付ではFPCで世界トップのNOKの製品開発に関し「日本メクトロンが液晶ポリマーを採用した両面フレキシブル配線板(FPC)を開発した・・中略・・特に10GHz以上の高周波信号で、その特性をいかせる。」として以下のように報道されています。 …

フレキ基板(FPC)では屈曲強さへのニーズが高いために、主に圧延銅箔が使われてきましたが、電解銅箔の採用も増えています。

電解銅箔では、数十万回折り曲げても切れにくい高級品が開発され、採用が増えています。電解銅箔で世界トップの三井金属は、このFPC向けの供給を増やすために、上尾工場の休止設備を再開し、07年度に生産能力を8割増やすと発表しています。同社の商品名DF…

フレキ基板(FPC)の材料となるフレキ銅張積層板(FCCL)の製造では、銅箔の性能向上の競争が続いています。

銅箔とフィルム基材の接着強度を高めるために蒸着による粗化処理などの表面改質を施された圧延銅箔の供給は、日鉱金属や福田金属箔粉といった老舗企業に加えて、2001年設立のマイクロハード*1が6μ極薄圧延銅箔の量産技術で参入しました。圧延銅箔ということ…